今日の相続空模様⑫~相続対策は究極のライフプランニング~【2010年 第12回】

【2010年 第12回】 今日の相続空模様⑫~相続対策は究極のライフプランニング~ 家計コラム

平川すみこ ⇒プロフィール

相続対策とライフプランニング

相続対策は主に3つあります。
(1)争族防止対策
(2)相続税軽減対策
(3)相続税納税資金対策

相続対策は、ご自身が築いてきた財産をどう遺したいのか、形ある財産だけではなく、家族等への想いをどう遺すのか、ということです。争いやトラブルのないスムーズな相続のためには、自分が生きているうちにしっかりと対策を考えておく必要があります。
ですので、相続対策というのは、究極のライフプランニングなのだと私は考えています。

相続税がかかる場合

(2)と(3)の相続税に関しては、相続税の納税対象となる方にとって必要な対策ということになりますが、今後の税制では、相続税は増税傾向にあります。従来であれば相続税の心配をしなくても良かった方々にも相続税の負担が生じる可能性がありますので、改正の内容には十分注意が必要です。

相続税がかかりそうであれば、税額を軽減する対策の検討が必要になりますし、納税資金をどうするかの検討もしておくことが大切です。なぜなら、納税するのはあなたではなくて、財産を取得した相続人等だからです。相続が開始してからでは間に合わない対策もありますし、納税資金の準備ができずに、大事な財産を売却することになったり、物納することになったり、と大変な思いをさせてしまうことになります。

ですが、ここで大きな留意点があります!
相続税の税金対策と争族にならないための対策が、必ずしも同じ方向になるとは限らないこと。税金を軽減するための対策をしたばかりに、相続人たちがもめてしまうこともあるのです。

相続人たちが負担する税金はなるべく少ないほうがいい。
それはもちろんそうなのですが、税金を多少多く払うことになったとしても、相続人同士でもめることのない遺産分割を優先させたほうがいいということもあります。

相続税について相談される場合は、節税だけではなく全体を通じて対策を考えてくださるような税理士さんを選ぶようにしましょう。

相続税がかからない場合

そして、相続税がかからない場合は、(2)と(3)の対策は必要ではありませんが、(1)の争族防止対策を考えておくことは重要です。

うちの家族に限ってケンカしたりすることないから・・・。それはあなたがそう思っているだけです。表面上の争いにならなくても、ずっと心に不満やわだかまりを抱えてしまい兄弟仲がうまくいかなくなってしまうことだってあります。

そうならないためにも、相続人たちが全員納得できるような遺産の分け方を考えておくこと、どうしてそのように分けるのかというあなたの気持ちや考えを伝えることが大切ですね。

あなたの気持ちや考えを伝える最善の方法は、やはり「遺言」や手紙です。話して伝えるという方法もありますが、後から「こう聞いた」「それは聞いてない」といった問題が生じることも。録画や録音しておくとよいかもしれませんが、話すプラス書き残しておくというのが良いと思います。

「遺言」や手紙は生きているうちにしか書けません。「遺言」を書くということはまさにライフプランニングなのです。

遺言を書きましょう

「遺言」を書くというのは、もうすぐ死ぬようで縁起が悪い、と考える方もいらっしゃるようですが、「遺言」は元気なうちしか作成できません。

「遺言」というのは法律行為です。遺言の内容に法的効力を持たせるために、民法では作成に当たって厳格な規律を設けています。そのひとつが「意思能力」で、正常な判断能力のもとで作成されたことが重要になります。遺言を作成したときに正常な判断能力があったのかどうか、それで問題になることも多々あります。

また、一人で作成できる「自筆証書遺言」は、全文自筆でないと無効になってしまいます。手が震えて字が書けないとなると、遺言を一人で作成するのは困難になります。

さらに、不動産は登記簿上の所在地をきちんと書いておいたり、預金もどの預金か明確になるように、といった書き方の注意点もあります。日付の記載や押印を忘れても無効です。そして、何より遺留分に配慮した内容にすることも大切でしたね。

きちんと法的に有効な遺言を作成するには、費用等がかかってしまいますが、「公正証書遺言」の作成をお勧めします。公証人は元裁判官等の法律のプロです。書き方はもとより、遺留分についてどうしたらいいかといった相談等にものっていただけます。

そして、原本は公証役場で保管されますので、偽造や紛失の恐れがなく、家庭裁判所の検認も不要なので、相続手続きがよりスムーズになります。

また、「遺言」は何度でも書き直しができます。一度作成すると後で内容を変えることができない、なんてことはないのです。「公正証書遺言」で作成した内容の一部を変えたいなという場合は、「自筆証書遺言」で、その部分についてだけ書き直すということも可能です。「○○に相続させる」としていた財産を生きている間に売却してしまってもいいのです。

さらに、これはある公証人さんに聞いた話ですが、遺言を作成されてから長生きされる方はとっても多いそうです。ですから、縁起でもないと思わずに、安心して生活していくためにも、早いうちに遺言を作成しましょう。そして人生を楽しんで長生きしながら、状況に応じて気軽に何度でも書き直しましょう!

1年間にわたって書かせていただいた「今日の相続空模様」。相続税に関しては触れていませんが、相続の基本的なエッセンスはお伝えできたかなと思っております。このコラムが、皆さまの相続を考えるにあたって少しでも参考になり、晴れ渡る空のようにスムーズでトラブルのない相続につながれば幸いです。

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