自社が評価されているかどうかを知るためのポイント【2010年 第 7 回】

【2010年 第 7 回】 自社が評価されているかどうかを知るためのポイント  銀行との上手な付き合い方

樗木 裕伸(オオテキ ヒロノブ)

先月紹介しました銀行が提供する「情報」「機能」「サービス」(以下、情報提供等と呼びます)を『顧客にとってメリットが大きい取引』(X軸)と『銀行にメリットが大きい取引』(Y軸)のグラフに分類してみましょう。

 

銀行にメリットが大きい取引(Y軸)って?

銀行が提供する情報提供等は、(a)「銀行の収益機会を創出するためのもの」と(b)「営業的に社内決裁を取りやすくするためのもの」つまり銀行内での顧客の「格」をアップすることで高付加価値の情報提供等をしやすくする目的で行われるものがあります。

(a)には、外為情報、融資情報、関連会社の機能紹介、不動産紹介などがあります。
これらは、基本的には、銀行がビジネスチャンスを掘り起こすためになされます。
情報提供というと聞こえはいいですが、顧客のニーズの有る無しに関係なく、犬も歩けば棒にあたるという感覚で提供される場合も多く、セールスの延長線である場合も少なくありません。

(b)には、支店長訪問、役員訪問などがあります。
銀行の通常の決裁権限は、支店長にあります。けれども支店長が決裁できないものは、本店決裁(審査役、部長、役員、頭取など)により判断されます。
ですから、支店長や役員に自分の顧客を知っておいてもらうことは、営業がやりやすくなるため銀行担当者にとって大きなメリットになるのです。

顧客にメリットが大きい取引(X軸)って?

銀行の情報提供等で顧客にメリットが大きいものには、(c)「有利な取引条件」と(d)「有用な情報」とがあります。

(c)には、送金手数料・外為手数料などの手数料割引や融資・預金金利の優遇などがあります。
これらは、銀行の収益(顧客にとっては費用)を削ることになりますから、銀行側から進んで提供されることはなく、難しいと言えます。
けれども自分たちの収益を削りさえすれば対応できる話なので、やる気になればそう難しい話ではないのです(その銀行をやる気にさせるのが大変ですけどね)。

(d)には、不動産紹介、顧客紹介、営業支援などがあげられます。
それらは、よく耳にする情報提供等であり、日常的になされていると思われています。ところが顧客にとって本当に有用な情報提供等を行うのは、銀行担当者にとって結構ハードルが高いのです。

けれども、もし情報提供等を受けられたら、自社の手数料の値下げなどの「有利な取引条件」などよりはるかに大きなメリットが得られます。
不動産業界に出回ることのない、各支店だけが持っている極秘物件の紹介受けたり、銀行の信用力をバックに顧客(販売先や提携先など)の紹介を受けたりすることができるからです。場合によっては銀行全店の行員や関係会社社員への営業斡旋などを受けることもできます。

銀行・顧客双方にメリットの大きい取引って?

銀行の情報提供等で銀行・顧客双方にメリットが大きいものには、(e)「取引深耕(メインバンク化)を図るためのもの」があります。

(e)には、創業家親族の採用、出向・転籍による人材支援(天下り)、系列ベンチャーキャピタルの出資・私募債引受・資本提携(株式持合い)などがあります。
例えば、創業家の跡取り息子を銀行に採用することで、銀行側としては人質(顧客の囲い込み)として、顧客側は息子に高い教育(社会人として、財務や銀行取引の勉強として)を受けさせられるというメリットがあります。

つまり、(e)の取引深耕関係を構築することで、メインバンク化が進みます。銀行にとっては、ライバル銀行と完全な差別化が図れますし、顧客側は業績悪化時にもメインバンクとしての支援が期待できます。

「情報」「機能」「サービス」の分類図

個別の情報提供等を評価・分類し、グラフにプロットすると以下のようになります。

「銀行にメリットが大きい取引」が多い方は銀行にとって「都合のいい客」になってしまっている可能性があります。

一方「顧客にメリットの大きい取引」が多い方は、上手に銀行機能を活用していると言えます。
ただ銀行側は現在好業績の顧客だから無理を聞いているに過ぎないということは認識されたほうがよろしいでしょう。業績が悪化するとともに対応は変化してしまいます。

一番、銀行に評価されているといえるのは、「銀行・顧客双方にメリットが大きい取引」が多い方です。
どちらかが無理してメリットを拠出していても長くは続きません。双方にメリットがある形になってはじめて、中長期的に磐石な関係を築くことができます。

今回は、個別の情報提供等を分類し、どのような取引が多いかを見ることによって、自社が評価されているかどうかを判断してもらいました。
次回は、提供する側の銀行の内部事情などを交えつつ、今回ご紹介したいくつかの個別の情報提供等に関して掘り下げます。それによって銀行との上手な付き合い方のヒントにしていただけたらと思います。

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