シングルマザーの相続【2012年 第3回】

【2012年 第3回 シングルマザーの相続】女性のための幸せ相続を考える

マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス

突然わが身にもしものことが起きたら、子どもたちは?親権はどうなるの?残された子どもたちを守るために、シングルマザーさんが備えておけることとは。

未婚・非婚で子どもを育てている、あるいは夫と離別したシングルマザーの方が万が一不慮の事故や病気などで亡くなってしまったら・・残された子どもたちのことが一番心配ですよね。

■ シングルマザーが亡くなると

単独で親権を行うシングルマザーが亡くなると、子どもの親権者は不在となります。親権者とは子どもが成人するまで世話をしたり、教育やしつけをしたり、日々のお金の管理や法律行為を代わって行う権利義務を持つ人のことです。

さしあたっては預貯金の名義を変えたり、生命保険金の請求をするなどの相続手続を行ってくれる大人も必要となりますが、実家の両親など周りの大人が代わりに手続をしようと通帳や印鑑を持って金融機関に行っても、そのままでは受け付けてもらえません。これらの手続は所定の手続のもとに就任した「未成年後見人」でなければ行えないからです。

離婚の場合、親権については、離婚した元夫に自動的に親権が復活することはありませんが、元夫が家庭裁判所に親権者変更を申し立てて認められれば親権者になる可能性はあります。

仮に元夫が親権者になれば、未成年後見人が既に就任していても、後見人の役目は終了します。ただし、親権者変更の審判では、子どもの心身の状況や意向、元夫の生活状況、親権者の変更の必要性等の事情に基づき裁判所が総合的に判断しますので、簡単に元夫に親権変更が認められる訳ではありません。

■ 親がわりの「未成年後見人」

未成年後見人とは、親権者とほぼ同等の権利義務を持つ、いわば親がわりの人で、親権者がいない場合等に定めるものとされています(民法838条1号)。未成年後見人には、最後に親権を行う人(この場合、母親)が遺言書であらかじめ指定しておく方法と、母親の死亡後、一定の親族などの請求によって家庭裁判所が選任する方法があります。

未成年後見人は、子どもの養育などのほか、財産目録を作り収支計画を立てたり、預貯金の取引記録や領収証の整理をして家庭裁判所に報告する仕事も行います。

後見人による万が一の不正行為を防いだり、他の親族から不信感を持たれないために、後見人の仕事をチェックする「未成年後見監督人」をつけることもできます。後見人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹等は監督人にはなれないため、それ以外の人を選ぶようにします。未成年後見監督人も、遺言書で指定する方法と家庭裁判所に選任してもらう方法があります。

■ 子どもの幸せを、遺言書に託す

万が一に備えて、未成年後見人を誰にしたいかという希望を意思表示しておけるのは遺言書だけです。遺言書を活用すれば、信頼できる人をあらかじめ後見人に指定しておける安心感があるだけでなく、残された大人たちも突然のことにどうすべきかとまどわずにすみます。どのように子どもたちを育ててほしいかという希望を書いて残しておけるのも良い点です。

これに対して母親の死亡後に、家庭裁判所に選任してもらう方法では、両親や兄弟姉妹などが後見人の候補者にはなれても、裁判所による聞き取りや調査などに基づき、総合的な判断の下に選任されるかどうかが決定されるため、候補者が後見人となれるかはその時になってみなければわかりません。また、後見人が選任されるまでには2~3ヶ月程度の時間がかかりますので、その間は相続手続なども行えません。

遺言書があれば遺言者の死亡により直ちにその効力が発生しますので、後見人に指定された人が10日以内に市町村役場に遺言書の謄本を添付して未成年後見開始の届出を行い、すぐに後見人としての仕事を開始できます。

未成年後見人になれるのは1人だけとされていますので〔下記(注)参照〕、遺言書には、たとえば実家の父を指定しておき、万が一父が自分の生前に亡くなった場合には兄弟姉妹の1人を後見人に指定するといった予備的な遺言もしておくと安心です。なお、遺言書で指定されたからといっても当事者は就任を断ることができますので、あらかじめよく話し合って相手の了承を得ておくことも大切です。

シングルマザーの方にとって、自分の意思で未成年後見人を指定しておくことは、もしものときに備えておける大切な相続対策の1つです。もっともその前に、子どもたちにとってはいつまでも元気なお母さんでいてくれることが、何よりの財産となるでしょう。

(注)未成年後見制度の見直し(民法改正)により、平成24年4月1日(予定)より、複数の人または法人が未成年後見人となることが可能になります。

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