マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。
岡本 英夫 ⇒ プロフィール
去る10月4日、自民党総裁選で高市早苗氏が総裁に就任された。
その高市早苗氏で思い出すことがある。1998年に自民党本部で開催されたFPについての会合である。
今回はFPの前史と言ってもよい、その会合について紹介してみたい。
突然の大蔵省からの参加依頼
1998年(今から27年前)5月の金曜日、関西での仕事を終えて本社(近代セールス社)に連絡すると、大蔵省(現財務省)から筆者あてに電話があったという。
自民党の金融部会がFPについての会合を企画しているので出席してほしいとのこと。
翌週、都合のつく日を参加者調整し、日時は6月11日午後4時からに決まった。
会合の内容は日本FP協会と金融財政事情研究会、近代セールス社が参加し、FPについてのそれぞれの活動内容を掌握したうえで、自民党金融部会として今後のわが国のFPの方向性を探ろうというものだという。
自民党本部の会議室でおこなわれ、多くの自民党議員と大蔵省の関係者が参加するという。
当日は、日本FP協会から田中英之専務理事ほか2名、金融財政事情研究会からは倉田勲専務理事ほか1名、近代セールス社は筆者と担当常務が出席した。
自民党からは担当の坂井隆憲議員をはじめ林義郎元大蔵大臣(林芳正前官房長官の父)、高市早苗議員(新総裁)など数十名の議員が参加していた。
自民党議員に向けての各参加者のプレゼン
各参加者とも用意した資料を配布したが、近代セールス社はFP事業のパンフレットに加えて1998年版のFP手帳を参加者全員に配布した。
高市早苗議員がFP手帳をめくりながら「年金について詳しく載っているわ。便利かも」などと隣にいた片山さつき議員と話し合っていたのを憶えている。
日本FP協会からは田中専務理事がCFP®・AFP資格について紹介し、金融財政事情研究会は労働省認定の「金融渉外技能検定」について紹介し「唯一の公的資格」であることを強調した。
これについては自民党議員から「労働省は厚生省と合併する。労働省認定資格が継続するかどうかは不明」と一蹴した。
近代セールス社(筆者)は銀行、生・損保、証券会社などから受託している企業内FP養成研修・通信講座について説明し、今後も企業内FPの養成に特化するつもりであることを強調、独立系FPについてはある程度の公的な規制が必要であることを述べたが、その時点では議員からの反応はなかった。
その後におこなわれた自民党議員との質疑応答では、公的な規制について問われ、大蔵省関係者の個人的見解を紹介したが、ある議員から「大蔵省がそんなことをいうわけがない」と否定された。
「個人的見解だが、と断っての意見でした」と回答すると、それ以上の追及はなかったが、この質疑には緊張した。
その場で感じたのは、自民党がこうした会合をおこなうということは FPが公的資格化の方向に向かいはじめたということで、近代セールス社の個別金融機関対応は難しくなるのではないかということだった。
その後
この会合後、自民党内に「金融問題調査会ファイナンシャル・コンサルタント等小委員会」が設置され、中央省庁再編などを経て、2002年4月に厚生労働省が管轄する技能士制度に「ファイナンシャル・プランニング技能士」が加わり、FPの資格化が実現することになる。
また、日本FP協会が2001年7月に内閣府から特定非営利活動法人(NPO法人)の認可を得て、組織としての不透明性が解消されていったことも大きかった。
この流れの中で、近代セールス社は日本FP協会の法人会員、認定教育機関として登録することになったのである。
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