富む前に老いる中国【2012年 第4回】

【2012年 第4回】富む前に老いる中国
ケース別コラム – 海外メディアから読み取る資産運用

マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス

 

中国の急激な高齢化は、中国の将来を想像する時に、誰もが意識するメジャーな問題だと思います。4/21の英エコノミスト誌は、国連の人口統計予測を用いて中国とアメリカの人口構成を比較し、これこそ中国のアキレス腱であると指摘しています。

無敵の中国

・2010年、製造業生産高、エネルギー消費、自動車売り上げでアメリカを抜く
・軍事支出は、過去20年間、年平均16%で成長
・IMFによれば、中国は2017年には購買力平価で世界最大の経済大国アメリカを追い越す

2010年には、日本を抜きGDP換算で世界第2位の経済力を持ち、経済力でも軍事力でも発言力を増している無敵の中国の弱点は・・・。

出生率の低下

過去30年間で、中国の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数)は、2.6から1.56に低下(表1行目:Total fertility rate,2010)。上海では2010年に、おそらくは世界で最低レベルの0.6%の出生率を報告。国連によると、全国的な出生率は2015-20の間1.51まで低下する。中国1.56とアメリカ2.08の数字の違いは大きくないが、長期間では社会的に大きなインパクトがある。

中国の人口は、2010年の13億4千万人から2050年の13億人を割り込むところまで減少する。この試算は、出生率が回復し始めていることを前提としており、もし低いままであれば、人口は2060までに10億人を割り込むかもしれない。対照的に、アメリカの人口は、40年間で30%増加すると設定されている。中国は2026年にその人口のピークを打つが、アメリカの人口のピークがいつかは不明(表3行目:Peak Population year)。

2国の違いは中間年齢(人口の若い方/老いた法から半分の年齢)を比較するとより印象的(表4・5行目:Median age 2010-2050)。1980年の中国の中間年齢は22歳で、若い発展途上国の特徴を示していた。現在は34.5歳とより先進国に近く、アメリカの37歳とほとんど変わらない。しかし低下する出生率と既に巨大な成人人口の老化が、中国の高齢化を先例の無いペースで進行させ、2050年までに中国の中間年齢は49歳に達する。上海人口計画生育委員会(The Shanghai Population and Family Planning Committee)の試算では、2020年までに都市部の人口の1/3以上が60歳以上となる。

深刻な経済的、社会的な影響

もっとも明らかなことは、年金受給者の膨張。その他の先進国とは異なり、中国は豊かになる前に年をとる。現在、中国では総人口の8.2%が、アメリカでは13%が65歳を超えているが、2050年までに、中国では26%とアメリカより多くのシェアを占めるようになる。

急激な中国の高齢化は、4-2-1現象(1人の子どもは2人の親と4人の祖父母の面倒をみる)と呼ばれる問題に直面。貯蓄率が高いとはいえ、若い世代がそのような負担を負えるかあるいは負おうと思うかは疑問であり、年金制度に極度に依存することに。

中国は2000年に年金制度を開始した。しかし僅か3億6500万人しか年金制度に加入しておらず、国の年金資金積立不足はGDPの150%に達している。行政区毎に運営される年金基金のほぼ半分は赤字で、地方自治体は時折支払いを怠っている。

より深刻なのは、2010年から2050年の間、中国の労働力人口は、72%から61%へと11%低下すること。現在の膨大な労働人口を考慮しても、かなりの縮小であり、中国の高齢者依存度(15-64歳の労働者と65歳以上の人数の比較)の上昇を意味する。現時点では、その割合は11%とアメリカの20%の約半分だが、2050年には4倍の42%に達する。

労働力の輸入と世界の工場の終焉

不完全就業の地方居住者のプールにもかかわらず、安い労働力の無限の流れは枯渇し始めている。中国は、既に若い労働者の不足に直面しており、2013年からの労働力の縮小によって、これらの問題は悪化し始める。

オックスフォードPopulation Ageing研究所のサラ・ハーパーは、中国はこうした年齢構造について綿密に調査し、それぞれの職業において、いつスキル不足が発生するかを把握しており、国外の労働者を探すことによって、影響を埋め合わせようとする可能性が高い、と指摘する。 Manpower(ビジネス人材紹介会社)は、2030年までに中国が労働者を輸出するよりむしろ、外から労働者を輸入しているであろうと予測する。

アメリカは大量の移民によって、技術力のある労働者を確保することに成功した国のまれな例の1つで、一般的に大規模な移民は、独自の問題を引き起こす。アメリカは、移民の長い歴史と強い法律と政府機関を持った開かれた他民族社会だが、中国はこれらの特徴のいずれも持ち合わせていない。

このような問題に直面しているのは中国だけではなく、もちろん日本を含めて、全ての裕福な国々が年金コストの上昇に苦しんでいます。ただし、高齢化の進行スピードの速さと、裕福になる前に老いる(可能性)という中国の特異な点、そしていつ人口がピークを打つのかは、中国一国に留まらず、世界経済の動向を占う上でも注目に値すると思います。

 

参考文献
The Economist “China’s Achilles heel”
http://www.economist.com/node/21553056

 

  • コメント: 0

関連記事

  1. 30歳の未婚男性が遺族年金受給中【2014年 第5回】

  2. 【2014年 第6回】がんになって考える保険のこと

  3. 子育て世代はこんなときに生命保険を見直す!【2012年 第9回】

  4. 海外に投資するための金融商品②「海外REIT(その1)」【2016年 第3回】

  5. 家計簿管理にひと工夫、どうすればいい?お金の運用、どうすればいい?【2009年 第 18 回】

  6. 「アロハ」が持つあたたかさ【2009年 第 7 回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。