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ケース別コラム - 経済統計から考える資産運用

2012年 第4回 増税の景気に対する影響
有田 宏  ⇒プロフィール

“一般に増税は景気に悪影響を与える”と言われています。しかし、それで国民に安心な社会保障制度を提供すれば、国民は安心してお金を使うようになるかもしれません。

 消費税の増税論議が行われています。

 賛成派の論拠は言うまでもなく深刻な財政状況。特に2009年に基礎年金の国庫負担を1/3から1/2に引き上げたがその財源は後回し。とりあえずは霞ヶ関埋蔵金、すなわち“へそくり”を取り崩してしのいできましたが、それも底をつきそうなので、恒久的財源を確保する必要に迫られてわけです

 一方。反対派の論拠の一つは景気への悪影響。増税は可処分所得を減らし需要を冷え込ませる、というものです。特に今回の消費税引き上げの目的は財政赤字対策。増税されたお金は新たに財政政策として国民に回ることは無く赤字幅の減少に使われるだけで、それだけ景気への悪影響が危惧されています。

 

 増税の反対は減税。景気が悪い時に国民の需要喚起のために景気対策として減税策がとられます。他にも公共事業などで財政支出を増やし、国民に多くのお金が回るようにすることによる需要増大策があります。どちらにしても、財政は赤字となりますが、これは景気が回復した時の税収増による黒字で賄えば、単年度では赤字や黒字となりますが、ひとつの景気循環過程では財政は均衡します。(グラフ1)

 

“景気が悪い時は、減税や財政支出を増やして景気を好転させる。”これは世界各国政府の経済政策の常識となっています。しかし、経済学の世界では必ずしも常識ではありません。財政政策による景気拡大、これに否定的な説がいくつかあります。ここでは、イギリスの経済学者リカードの“中立性命題”をとりあげてみます。命題の一部の赤字財政の効果を簡単に要約すると次の通りになります。

 

①景気対策のため政府による国債発行による赤字財政

②国民は赤字償還のための将来の増税を予想

③国民は将来の増税に備えるために現在の消費を抑制

④赤字財政による需要増大は消費抑制をもたらし景気対策の効果は消滅

 

 赤字財政は景気を回復させない。そうすると景気回復時の黒字で埋め合わせした赤字が残ります。回復しないまま赤字財政を続けると、際限なく赤字が累積します。(グラフ2)身近にそのような例があるような気がします。

 

 

 実際に国民がここまで予想するはどうか?ただ、今の日本の現状を見る限り、財政は維持不可能なのは国民の一致するところではないでしょうか。今、消費税を上げなくとも、将来の大規模な増税または社会保障な減額は避けられないと考えている、そこまでいかなくとも大きな不安を感じていることは想定できます。そのような中では将来の不安に備えるためにも、資産をおいそれと消費に回すわけにはいきません。

 

 ここで、消費税を上げて国民に対して将来の不安感を和らげることが出来れば、国民の消費は高まり、増税による経済へのマイナス効果をいくらかは相殺することも可能になるかもしれません。そうだとすると消費税の引き上げは必ずしも景気に悪影響を与えるとは限りません。

 

 しかし、消費税引き上げの前提として財政の無駄の洗い出し、そして社会保障制度の世代間格差の是正が無ければ、国民は納得する事は難しいでしょう。年金支給も長寿社会にあって、果たして65歳で良いのでしょうか。空手形に終わりそうな65歳からの年金より、確実な70歳からの年金の方がはるかに安心感は高まると思います。

 税制のより一層の効率化そして社会保障改革と一体化した消費増税は日本復活の第一歩になるかもしれません。

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