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ライフプラン別コラム - 女性のための幸せ相続を考える

2012年 第2回 事実婚-妻(未届)の相続
マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス 

婚姻届を出さない事実婚カップル。メリットもデメリットもありますが、こと相続においては、1枚の書類(婚姻届)を出しているかいないかでは大きな違いがあります。

■事実婚とは?

近年、社会的認知度が高まりつつあると言われる「事実婚」カップル。

 

「事実婚」は、婚姻の意思がなく単に同居している「同棲」とも、婚姻届を出せない何らかの事情があるという含みを持つ「内縁」とも違い、夫婦別姓を通したい(現在の民法では結婚したらどちらかの姓に統一する必要がある)、戸籍制度への反対などの理由から、主体的に婚姻届を出さない形態のことを言います。

 

婚姻届を出す法律婚に対しては、事実婚も内縁もほぼ同義に使われており、双方が独身で婚姻の意思を持ち、実質上夫婦としての生活を営んでいれば社会的には夫婦と認められ一般の婚姻関係と変わりません。また、別姓であっても住民票には夫(未届)、妻(未届)と記載することが可能です。

 

結婚制度に対する考え方や生き方が多様化する中で、事実婚も婚姻に準ずるものとして、法律婚と同等の権利や義務が一部、認められるようになってきています。

 

たとえば、夫婦であることの実態を重視した健康保険制度や年金等の社会保障関連、携帯電話の家族割引や航空会社のマイレージの家族特典といった民間会社のサービスにも、法律婚とほとんど変わらない権利が認められているものも少なくありません。

 

  

事実婚の相続の特徴

しかし、相続に関しては、戸籍制度をベースとした民法上の婚姻関係が判断の基準とされているために、事実婚ゆえのデメリットがあることを予め認識しておく必要があります。

 

1.事実婚の妻には相続権がない

法律婚との決定的な違いは、パートナーの財産を相続する権利がないことです。

 

夫婦としての実態があっても、2人で共に財産を築き上げてきたとしても、夫に1人でも相続人がいれば夫の財産は親や兄弟等、夫の相続人のものとなります。2人の間に認知された子ども(非嫡出子といいます)がいれば子どもが相続人となりますが、夫が以前法律上の結婚をしていて、その相手との間に子ども(嫡出子といいます)がいるような場合には、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分です。

 

夫名義で自宅を購入した場合などは、遺言がなければ自宅についても妻は一切の権利を失うことになりかねません。家を追い出されることにでもなれば、その後の妻の人生が大きく狂ってしまうことも考えられます。

 

なお、賃貸マンションなどの借家に住んでいる場合については、相続権のない事実婚の妻が賃借権を承継することはできませんが、夫の相続人が承継した賃借権を援用(住み続ける権利があることを主張すること)できることを判例は認めています(最判昭37.12.25)

 

☆相続人がいない場合・相続人が相続放棄をした場合には

夫に戸籍上の相続人が1人もいないか、すべての相続人が相続放棄をした場合には、相続財産は原則として国庫に帰属しますが、特別に縁故のあった者として事実婚の妻が家庭裁判所に「特別縁故者に対する財産分与」の審判申立をし、家庭裁判所が相当と認めれば、相続財産の全部または一部が与えられることがあります。

 

 

2.事実婚の妻は税制メリットが受けられない


・相続税の配偶者の税額軽減の適用がない

法律上の配偶者には、最低でも1億6000万円までは取得した遺産額に対して相続税が課税されないという税額の軽減制度がありますが、事実婚の妻の場合にはその適用がありません。

 

・相続税の2割加算がある

事実婚の妻が夫の相続財産を取得した場合には、相続税額に2割の加算があります。

 

・生前贈与の配偶者控除の適用がない

不動産や、不動産を購入するための資金を妻に生前贈与する場合の贈与税の配偶者控除が適用されません。婚姻期間20年以上の法律婚の夫婦では、最高2000万円までの控除があります。

 

 

■事実婚の妻の幸せ相続のために

相続・税金面においては不利な点が多い事実婚。それゆえにパートナーの万が一に備え、残された妻が困らないよう事前にできる対策をしておきたいものです。

 

いくつかの対策案や注意点を挙げてみました:

 

1.  遺言書で夫から妻へ財産を渡す

夫が「遺言書」で意思表示しておけば、妻に財産を遺贈(相続人以外の人へ財産を贈ること)することができます。遺言書は、証拠力が高く有効性をめぐって争われることの少ない公正証書遺言を作るとより安全・確実です。

 

ただし、相続人がいる場合には遺留分(民法で特定の相続人に保証している最低限度の相続分)への考慮が必要です。遺留分を無視して相続人の取分ゼロなどと配分してしまうと、妻が相続人から遺留分に満たない分の財産を請求される可能性があります。

 

2. 生前贈与をする

生前贈与は贈与税の対象となりますが、夫の意思が生前に確実に実現される点では安心です。ただし贈与する時期によっては遺留分の問題が生じますので注意が必要です。

 

3. 生命保険の受取人を妻にする

相続財産の受取りに制限がある分、夫が死亡した際の死亡保険金を妻の生活保障等に充てるのも1つの方法です。ただし、事実婚の妻が保険金の受取人となるには、所定の条件を設けている保険会社が多いため、条件をクリアできるかが問題となります。また、死亡保険金は、事実婚の妻には相続税の非課税枠の適用がないことにも注意しましょう。

 

4. 妻の生活設計(ライフプラン)を立てる

遺族年金や死亡退職金、労災保険の遺族補償など、社会保障制度の受給要件を満たすかを確認し、妻がひとりになった後の生活設計を予測して立ててみましょう。1人暮らしの必要資金の目安を把握しておくことで、妻の働き方や暮らし方を見直す等、事前の対策がとりやすくなります。

 

5. 税制メリット優先なら、法律婚を検討する

相続税が発生し、税制上のメリットを受けたい場合には、婚姻届を出し入籍することも視野に入れてみましょう。

 

相続・税金面では不利となることの多い事実婚ですが、家族関係のあり方の変化などを理由に、相続で非嫡出子と嫡出子を差別することは、事情によっては憲法違反となるという高裁の判決が出るなど、近年、事実婚の相続をめぐる環境には変化が見られています。

 

こうした環境の変化にも注目しつつ、ふたりにとって優先したいことは何かを考え、適切な準備をしておくことが事実婚カップルの幸せな相続につながるものと思います。

 

 

参考文献: 内閣府 平成17年版 国民生活白書

注:本記事の税務に関する記載は平成23年度の税制に基づくものです。

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