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家計コラム - 遺言を書く

2011年 第8回 こんな遺言はトラブルのもと② 特別受益分について
マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス 

生前贈与を受けていた相続人と、何ももらっていない相続人・・相続分はどうなるの?遺言を書く際には、「特別受益分」への配慮も必要です。

● 特別受益とは

前回お話した「寄与分」と同様、遺言を書く際に注意を配りたいのが「特別受益財産」のことです。

 

特別受益財産とは、遺言者の生前に相続人が何らかの贈与を受け、それが相続分の前渡しとみなされるものを言います(相続人でない人に対する生前贈与は含まれません)。

 

具体的には、事業を始めるときの開業資金やマイホーム資金、結婚資金、生計のための資金などの特別の利益のことを言い、これらの贈与を受けた人のことを特別受益者といいます。

 

生前の贈与分を考慮せずに、遺言者の死亡時に現存している財産だけを遺産分割の対象とし、特別受益者と何らの贈与を受けていない他の相続人とで分けるのでは不公平が生じてしまいます。

 

たとえば相続財産が4000万円で、相続人が妻と長男次男。長男は遺言者の生前にマイホーム資金1000万円をもらっているケース。

 

死亡時の財産額を元に法定相続分で分けるとすると、妻が2000万円、長男次男がそれぞれ1000万円ずつ相続することになりますが、マイホーム資金も含めて考えると、長男は遺言者から実質的に2000万円をもらったことになり、他の相続人にとっては不満が生じやすくなります。

 

この不公平感をなくすために、死亡時の財産に生前の贈与分を加えた額を相続財産の総額として遺産分割を行う制度を、「特別受益分の持ち戻し」と言います(民法903条)。

 

このケースでは、死亡時の財産4000万円に長男のマイホーム資金として贈与された1000万円を加算した総額5000万円を死亡時の相続財産とみなし(みなし相続財産)、それぞれの相続分を計算します。

 

その結果、妻の相続分は2500万円、長男次男は1250万円ずつとなり、長男分についてはそこから特別受益分1000万円を差し引くと相続財産として受け取れるのは250万円。これで実質的に平等な分配になるというわけです。

 

では、もし長男がマイホーム資金を2000万円もらっていたとしたら?

 

相続での受け取り分はゼロとなりますが、超過分750万円(=1250万円-2000万円)については、返さなくてよいとされていますので、他の相続人にとっては本来の相続分が減り、長男は結果的にもらい得・・ということになります。

 

●   遺言で、「贈与はなかったもの」とできる!?

「生前贈与をした分は、相続分から差し引かないでやってほしい」などの希望がある場合、遺言者は生前あるいは遺言書の中でその旨を意思表示することができます。

 

これを「特別受益の持ち戻し免除」と言い、法律要件を満たした遺言に記載すれば法的な効力を生じる法定遺言事項の1つです。

 

遺言書の記載例:

「遺言者は、長男○○に対し平成○○年に住宅資金として金1000万円を贈与してあるところ、同人の努力にもかかわらず事業不振の状態にあることを考え、相続分は上記贈与がなかったものとして算定してください。」

 

このような意思表示があれば、長男は相続財産から生前贈与分を差し引かなくてもよくなります。この時、他の相続人に不信感を抱かせないよう、遺言に持ち戻し免除をする理由を一緒に書いておくことがポイントです。 

 

なお、遺言者が持ち戻し免除の意思表示をしても、遺留分(相続人が最低限受け取れる相続分)を侵害された相続人がいれば、その相続人は遺留分を取り戻すことができます(遺留分減殺請求権)。

 

● 特別受益があった事実・なかった事実も書いておこう

生前、誰にどのような贈与をしたのかを明確にしておかないと、他の相続人がその事実を知らない場合があります。

 

あるいは、贈与を受けた一部の相続人同士で口裏を合わせて他の相続人に内緒にしてしまったような場合も、何も知らない他の相続人に不公平となり、相続分や遺留分の決定にも影響をおよぼしかねません。

 

これを避けるためには贈与の事実を遺言書の中で明らかにしておきます。

 

それとは逆に、贈与ではないのに、事情を知らない他の相続人には贈与ととられてしまう可能性があることにも注意が必要です。

 

たとえば共同所有している家の遺言者の持分を、同居している娘に生前に買い取ってもらったような場合、外形上、他の相続人には不動産の売買があったのか贈与があったのかの区別がつきません。

 

その場合には、遺言書に売買があった事実を示すとともに売買契約書や金銭授受の証明となる金融機関の記録など、売買の事実を明確に示す書類を残しておき、「タダであげたのではないので、特別受益財産ではない」ことをハッキリさせておくようにします。

 

どんな生前贈与が特別受益にあたるかの判断が難しい場合には、社会通念を考慮して個別の判断が必要となります。そのためにも、特別受益分の存在の有無と内容、遺言者の希望を遺言で明らかにし、相続人の無用な争いを引き起こさないよう配慮しておくことが大切です。

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SEO対策などweb上の誘導施策を行わず、地道に「顧客利益優先」原則に基づき、実務家FPの活動をしてきて、12年。
登録者の入れ替わりが進む中、倫理面が重視される昨今の世の中で、多くのみなさんに支持頂いているようで、感謝の言葉しかありません。
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