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- 数字は嘘をつく

2017年 第5回 平均という神話
有田 宏  ⇒プロフィール

ある集団の特性を調べるために、集団を構成しているものの平均を調べることが有ります。しかし、平均は必ずしも適切に特性を表すものとは限りません。平均にもいろいろな種類が有ります。多角的に各種の平均を調べることが必要になることが有ります。

ある集団の特性を調べるために、集団を構成しているものの平均を調べることが有ります。
しかし、平均は必ずしも適切に特性を表すものとは限りません。
平均にもいろいろな種類が有ります。
多角的に各種の平均を調べることが必要になることが有ります。
 

1.平均が実感とかけ離れている例
 2016年の総務省の家計調査報告によると、2人以上の世帯の、1世帯当たり貯蓄額は1,820万円という事でした。
これは銀行預金ばかりではなく生命保険や株式を含めた数字ですが、それにしても実感としては多すぎる気がしませんか?
 
この数字は算術平均で、サンプルの全ての貯蓄額を合計してサンプル数で割っています。
 
 
ある集団の身長の平均、学校のテストの平均点など、左右がほぼ対象の分布では、算術平均ではそれほどの違和感はないと思います。平均以下と平均以上、双方ともおおよそ半分となるでしょう(グラフ1)。
 
 
グラフ1
 

 一方、左右どちらかに偏りの有る分布(グラフ2)では、例えば一部の高額の貯蓄を保有している人が算術平均の分子を大きく引き上げて、結果として算出され生み出された数字も大きく上がってしまう。
サンプルの多くが平均に届いていないという現象が生じます。
 
グラフ2
 

 
2.中央値
以上のような問題を解消する手段として、算術平均ではなく中央値と言う数字を平均とする方法が有ります。
 
先の家計調査報告での1世帯当たり貯蓄額の中央値は1,064万円です。中央値と言うのは、貯蓄額の少ない方(あるいは多い方)から順位を付け、丁度そのサンプル数の半分に達する人の貯蓄額を平均とするものです。サンプル数が100人の場合、下位から(あるいは上位から)50番目と51番目の人の値を中央値とします。
 
身長の分布では、算術平均=中央値、がほぼ成立するでしょう。
テストの点数の分布でも、平均点が100点満点の25点などの極端に難しい、または易しすぎる問題でもない限り、算術平均と中央値はそれほど離れたものにはならないでしょう。
 
 
3.複利の落とし穴
これとは別に、算術平均が誤った結論に導く例として資産運用を考えてみましょう。
 
100万円を毎年平均5%で複利運用すると、10年後には162万円以上になります。
 
100万円×(1+0.05)^10=1,628,895
 
実は、これは毎年の収益率が安定して5%の場合のみ成立します。
 
今の日本では、安定して5%で運用することが不可能です。収益率も毎年変化するでしょう。
 
現実の式は、収益率rは毎年変化するものとして、
100万円×(1+r_1 )(1+r_2 )⋯(1+r_10 )
となるでしょう。
 
毎年収益率が同じの場合に10年後の元利金が最高になります。
収益率rが、その算術平均がたとえ5%であったとしても、毎年変化する場合には162万円には達しません。
 
上の式を見てお気づきになられた方もおられるかもしれませんが、1年でも収益率がマイナス100%なると、その項は0になります。
 
0に何を掛け合わせても結果は0です。
資産運用では、一度でも証券が紙屑になるとそれまでどんなに収益率が高くとも運用残高は0になります。
 
この様な場合は算術平均ではなく、幾何平均(注)と言う数字を用いたほうが適切でしょう。
 
 
4.標準世帯は高齢の年金生活
なかなか平均と言うのも厄介です。
 
平均と言う数字が出たときには、それが算術平均なのか、中央値、どちらなのか?
以前は平均的な家庭とされた、サリーマンの夫と専業主婦の妻、それに子供2人が標準家庭とされていますが、これが現代は大きく崩れています。
 
そもそも専業主婦自体が今は少数派、専業主婦と言う言葉も100年後は死語になっているのでしょうか。
 
このまま少子高齢化が進めば、年金収入のみの高齢夫婦のみの世帯が標準世帯となるのでしょうか?

(注)上記、”複利の落とし穴”の例では、幾何平均は次の式になります。
幾何平均=√(10&(1+r_1 )(1+r_2 )⋯(1+r_10 ) )-1

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