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- 相続の実際の現場からレポ

2014年 第2回 相続の実際の現場からレポ第2回~公正証書遺言は病院でもできる~
竹原 庸起子  ⇒プロフィール

相続専門のファイナンシャルプランナー・行政書士の中野庸起子です。前回は「遺言が二つ出てきた。どうする?どうなる?」というお話をしましたが、今回は、法律で定められている各種遺言のうちの「公正証書遺言書」にスポットをあてます。公正証書遺言書は病院でもしっかりと残せるのです。ご存知でしたか?

高齢化社会の到来とともに生前に遺言書を残しておきたい50代以上の人々が増えています。遺言書にはよく知られているものとして自筆証書遺言書と公正証書遺言書とがあります。そのうちで「公正証書遺言書」とはどういうものでしょうか。

 

公正証書遺言書とは、遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口授(言葉で話して伝えること)し、それに基づいて公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言書として作成するものです。(日本公証人連合会HPより)

 

遺言者というのは遺言を残す人のことで、公証人とは実務経験を有する法律実務家の中から法務大臣が任命する公務員で、公証役場で公正証書の作成などの任務を果たすことが仕事です。(日本公証人連合会HPより)

 

公正証書遺言書は遺言をする日に2名の証人の立会のもとで行われます。これだけを読むと、遺言をする日に資料を持って証人とともに公証役場へ行けば、その場で口授して遺言書が作られるように思えますが、実際は事前に準備しています。もし公正証書遺言書を残したい場合は、遺言する人(遺言者)は遺言をする日より以前に、下記の書類を持って公証人と打ち合わせをします。事前に打ち合わせをしておけば遺言日にはほぼ出来上がった書類に遺言者と証人が署名押印するだけで済みますし、公正証書遺言書の公証人手数料は遺言者の財産価格を基準として計算するため、事前にそのための資料を公証人に預けておかなければならないからです。

 

遺言のために準備するもの      
○遺言者の現在の戸籍抄本
○遺言者が持っている財産のわかるもの
(不動産であれば登記事項証明書と評価証明書、預貯金であれば金融機関の通帳のコピー)
○遺言者の印鑑証明書

 

遺言の当日(これは事前に公証人と日時を約束しておきます)原則として遺言者が公証役場へ出向き、そこで証人2名の立会のもとに、公証人が作成した遺言の内容が意思通りかどうかをゆっくり読み上げて確認し、遺言者の意思通りであればその旨を公証人に伝え、その一連の流れの初めから終わりまで証人が立ち会ったことが確認できれば、最後に遺言者の署名および押印、証人の署名および押印で完成します。

 

以上から考えると、公正証書遺言書を残すためには、遺言者が公証役場へ出向かなければできないのではと思いますよね。実は、そうではありません。遺言を残したいと考える人が長期入院中や老人施設に長期にわたり入っていて外出が難しい場合や、自宅療養だが身体の不自由で出かけられない場合は、日当が別途必要ですが、公証人が遺言者のもとへ出かけてくれるのです。

 

ここで気を付けなければならないのは、公証役場以外で遺言ができるといっても、遺言者に意思能力がなければならないということです。いわゆる遺言能力があることです。公証人が話している内容を理解して署名押印ができるかどうかということです。自分ですべてを書かなければならない自筆証書遺言書とは違い、遺言の内容が理解できて自分の名前を書けて押印ができれば整うのです。(民法上の危急時遺言などもありますが、今回は一般的な遺言書のことを指しています)さらにまた、署名ができない場合でも、公証人が遺言者の署名を代筆することも、法律で認められています。

 

では、私が証人として立ち会った病床での公正証書遺言書の案件をご紹介します。
遺言者は90歳超えの女性。夫を戦争で亡くし、子供が2人いましたが、いずれも若くして亡くなりましたが、その後も一生懸命生きてきた女性です。財産は現金や不動産などがあり、子どもの子ども(孫)もおらず、高齢になってからは姪が面倒を見てきてくれました。その女性は姪に全財産をあげたいがどうしたらいいかということで、遺言を残すことになりました。

 

この女性は長期にわたり入院していたため公証役場へ出向いて遺言することはできないのですが、話を聞くことと少しの言葉を話すことはでき、意思もはっきりしていましたので、事前準備は私がすべておこない、遺言の当日は公証人に病院まで来てもらうことにしました。証人は私を含め専門家2名で立ち会いました。

 

病院のベッドでの遺言、遺言者と証人2名と公証人が必ずベッドのそばにいなければなりません。そして病床での遺言特有なのですが、主治医と看護師もその場に立ち会いました。

 

遺言の儀式が始まりました。公証人が遺言者のベッドのそばで、ゆっくりと自己紹介して、遺言者にわかりやすい言葉で専門用語はあまり使わず、優しく語りかけるように公正証書遺言の内容はこれでいいのかどうかを確認していきます。ゆっくり進めるので、時間がかかりますが、これが重要なのです。

 

そして、証人も自己紹介した後、いよいよ最終の意思確認です。公証人は「○○さんの遺言の内容はこれでいいですか?」とゆっくり問いかけ、遺言者はうなずきました。この最終確認ののちに遺言書に遺言者が自分の名前だけを枕もとで書き押印、続いて証人も署名押印。これで遺言の儀式は終了です。

 

この女性は遺言を終えた後、泣きながら喜んでいました。これで安心だと。
その1週間後に女性は亡くなりました。そして遺言の意思とおりに姪に財産を渡すことができたのです。

 

遺言は亡くなった人の意思を表すものです。公正証書遺言書をぜひ活用してほしいと願っています。

 

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